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何年ぶり?ねえ、これ何年ぶりのss?

しかも正規霖のおはなしじゃなくて、少年時代、こんなこともあったかもな、っていうお話です。

楽しんでいただけたら幸い。




「はあ・・・っ・・・はぁ・・・っ」

もう、追って来ない。

森は危険な妖怪多いから、とはオトナの言葉。

いわゆる<いい子>であるところの彼らは、彼らの気分がどれだけ盛り上がっていようと
追ってはこない。

人間は妖怪には勝てない。

故に人間は妖怪をアガめる。アガめることで、本来ならばとうてい敵うことのない存在からのホゴを得る。人間が妖怪をトウバツする、なんてことはありえない。そんな話を聞いても、実は「妖怪」が「妖怪」に勝った・・・というものに過ぎないだろう。妖怪に「勝った」より強い妖怪をアガめ、事実を変えたものだ。

「はあ・・・」

大岩に腰掛ける。この森には、人間には毒にしかならないホウシというものが舞っている、らしい。

「(――――)」

空気をめいいっぱい、吸い込む。

「はあ・・・」

<人間>には毒にしかならない空気が、心地よかった。




彼が彼になるために

人間は妖怪には勝てない。人間は妖怪をアガめる。人間は、妖怪にホゴされる。

ならば人間が、妖怪より強いならば?

その結果が・・・僕だ。

「いてて・・・」

僕は妖怪ではない。妖怪ではないが、人間でもない。

妖怪と人間のハーフ。妖怪と人間からできた子供。半妖だ。

物心つく前から一緒に遊んでいた子もいる。毎日一緒にかけまわって、毎日一緒にほんの少しの悪さをして・・・朝起きてから、辺りが暗くなるまで一緒に過ごす、みんなそんな友達だった。寺子屋にだって一緒に通った。

・・・一時は。

「はあ・・・」

痛み自体はもう、引いていっている。<半妖>といえど、体の頑丈さは<人間>のそれをはるかに超える。

だけど・・・それ以外は。

「いたいよ・・・」

僕は、僕のことを、皆と同じだと思ってるのに。

「辛いわね」

ハッと背後を振り返る。

「・・・ゆかりさま」

妖怪。それも妖怪のなかでも代表的に人間をホゴする、大妖怪。八雲紫。

「大丈夫、です」

大妖怪をあいてにだらしない姿は見せられない。

よたよたと立ち上がる。

「いいのよ、気にしないで」

「いえ、」

「・・・あなたは、こちら側でしょう?」

ズキン、と

「冗談よ、・・・半分、ね」

僕の立場は、あまりにも特殊すぎた。

ゆかりさまは僕がこの森にやってくると、いつも話しかけて来る。

「今日もこっぴどくやられちゃって」

ふわり、と揺れて、重力をすべて無視したゆかりさまの動作は優雅ながらやはり人間のそれではない。

「彼らの心は狭いわ」

ともだちに・・・彼らに、いつ、僕が半妖であることが知られてしまったのかはわからない。

「・・・」

「ふふ」

微笑んで、僕の目の前に降り立つ。

「ねえ、もう一度名前を呼んでくれないかしら」

「え・・・」

「ほら!」

「・・・ゆかりさま」

「うふふ」

何が面白いのか、くすくすと笑う大妖怪。

「ねえ、名前を差し上げましょうか」

「いえ、僕には、」

「母さまから与えられた名前がある?聞き飽きたわ」

「・・・」

「あら、ごめんなさい、怒ったわけではないの。ふふ」

ゆかりさまと僕は、こうしていつも、少しの時間お話をする。気遣われたら否定を、でも、ゆかり様の機嫌をそこねることはあってはならない。

「あなたは力の強い妖怪ではなく、かといって保護が必要な人間でもない。私、あなたのことで頭がいっぱいなの」

「・・・あの、」

「うふふ、冗談よ」

くすくす、とゆかりさまはわらう。

こうして過ごすのはゆかりさまのはからいか、気まぐれか。

「わかるのよ。妖怪は生まれながらにして自分の姿が変えられる。知能が低く生まれて来る妖怪は、その親が子の姿を変える。知性が育つまで、他の妖怪に狩られないようにね。あなたのお父様は・・・先天的に知能が発達している妖怪だったみたいね」

「・・・」

「あなたのお父さまから言伝を頼まれているわ」

「父さまから・・・?」

父には一度もあったことはなかった。妖怪側からしても、人と交わるのは禁じられていて、それでも好きあってしまった父さまと母さまは、僕が生まれてから、一度も会っていない・・・らしいし、父さまから言伝なんて、今まで一度も・・・

「・・・なんでしょうか」

「お前はお前だ、ですって」

「・・・はあ?」

たぶん、間抜けな声だったろうと思う。

「ごめんなさい、結構長々のしゃべっていたんだけれどね、めんどくさくてこれしか憶えなかったわ」

「はあ・・・」

「でも、十分でしょう」

一言で?十分?

「ふふ。彼、とても頑張ってね?妖怪同士の取り決めで、一度だけあなたに会えることに決まったの。でもね、恥ずかしがっちゃって、私に言伝。情けないわよねえ」

「・・・あの」

「うん、なあに?」

「ほんとにそう言ったんですか」

「ええ、そうよ」

「・・・そう、ですか」

一度も会いに来なかったくせに。今の僕の顔も、母さまの顔も知らないくせに。

「わかりました」

僕がみんなと違うから、みんなが僕を違うって言うから悲しいのに、もっと悲しいことを言うんだ。父さまは。

「・・・わかりました」

何かが、胸いっぱいに、こみ上げてきて、僕は、



「わぁーーーーーーーーーーーっっ!!!!!」

おなかいっぱい、叫んだ。

「・・・あらまあ」

ゆかりさまが、驚いた顔でこちらを見ている。

「泣かないのね」

「泣いても何も変わりませんから」

「オトコノコねえ」

「僕は、僕です」

「ふふ、そうね」

心臓が、やたらうるさく鳴っている。

「ゆかり様。ありがとうございました。僕、帰ります」

「あら、そう?お父様に言伝があれば、頼まれるわよ?」

「いえ、いいんです。ずっとそうしていればいい」

ゆかり様は、にやつく口元を扇で隠しながら、漂うように僕を伺っている。

「あ、でも」

これぐらいの憎まれ口は、言っておこう。

「あんまり母さまをほうっておくと、とられるぞ。母さまは妖怪が惚れるほどの美人だから」

「・・・うふふ、確かに伝えるわ」

「ゆかり様さよなら。やりたいことがたくさんあります。だから、たぶんもう、ここにもきません」

言い切る前に、体に急かされて、僕は走り出していた。


僕が僕であることを、許された日のおはなし。
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しのざき

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東方・霖之助ssを中心に。

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